ごく普通の一般市民が脱獄幇助など何だのという反社会的行動を取って
いくということで、前にご紹介したジェラルド・バトラーの『
完全なる報復』
や、ケヴィン・ベーコンの『
狼の死刑宣告』などと共通するところがある
テーマですかね。
正直申し上げて、ラッセル・クロウという俳優はもひとつピンと来ないと
いうか、ちょっと鼻につくところあったんですが、本作ではよろしかった
ですわー。実に見事に、堂々と主演を張ってまして、この長尺映画で
ほぼ出ずっぱりでありながらダレるところなし、サスガでございました。
これまですまんかったなラッセル。 って、友達かい…

余裕というか風格というかを感じさせる。
ごく普通の一般家庭にある朝突然警察が踏み込んできて、ララ(妻)を殺人
罪で連行、何かの間違いだと思ったら、証拠が揃ってる上にガイシャとの間
にちょっとした諍いもあって、アッという間に有罪が確定。もちろんジョン(夫)
は控訴上告を望むが果たされず、かくなる上は脱獄させるしかない、と決断。
といっても、ノウハウがあるわきゃないんで、脱獄囚として自伝を出してる
デイモン(リーアム・ニーソン)に教えを請いにいきます。今回はニーソンの
出番は茶店で脱獄のやり方を語るだけで、手引きしたり等の活躍はなし。

教えるといっても、すごいテクニックとか、そういうのは特になかったです
けどね。スカーフェイスが強面。
コーチを受けて入念なる脱獄計画を練るジョンですけど、偽造パスポートを
ゲットしようとする際に金を騙し取られたり等々で、手元資金が著しく減少。
こうなったら強盗でもやるしかない、と銀行まで行くが、すんでのところで
自制する。代わりに、前に自分から金を騙し取ったヤツを尾行して、仲間
(ヤク売人)のところから大金を強奪して、何とか資金工面に成功。

が、この一件の際にジョンは相手を銃殺してしまうんですな…。これで完璧
に後戻りは出来なくなったわけです。もう、突っ走るしかない。
脱獄させる手口ってのは、詳細省きますけど結構強引な方法でして、相当
幸運に恵まれてないと成功せんかったでしょうな。まあ、映画ですから…。
あー、強引といっても刑務所を爆破して一般市民を巻き込んで街中で激しい
銃撃戦…とか、そういった類のものとは全然違いまして、どちらかというと
地味ぃ~なやり口。かといって、スパイものみたいにハイテク操作で電子錠
をアンロック云々ってなこともなく、まあやっぱり地味ですかな…。
が、実際ご覧いただければご理解得られるかと思いますが、派手なことは
ないけど、決して安っぽくも陳腐にもなってないところが素晴らしいです。
地味言うからイカンのですな、現実的であると申し上げておきましょう。
逮捕妻にはエリザベス・バンクス。準主役です。個人的には結構ググッと
惹かれるタイプですな。普通っぽさが好ましいです。

『崖っぷちの男』のときも良かったしなあ。
夫のジョンはもちろんそう信じてるし、観賞してるこちらも、話しの流れや
キャラ立ちから考えて、当然彼女は無実というのが大前提なんですけど、
面会に行った夫に対して「本当に殺してないか確かめないの?」などと謎
めいた発言があったりする。え?ここからサスペンス軸が変わるのか?と
困惑しかかったんですが、この点については特にそれ以上の進展はなし
でした。
終盤辺りで、コトの発端の殺人現場で無実の証拠となる(可能性のある)
物件が、観客にだけ分かるように現れたりするんですが、これもそのまま
でして、結局どうなのかと結構モヤモヤする作り。が、モヤモヤはする
ものの、イライラはさせられない。謎めき方、見せ方が上手いんでしょな、
きっと。
さて、脱獄させた後、息子(ルーク)をピックアップして国外逃亡を図る
んですが、この辺りの警察との追跡劇は緊張感たっぷり。見せ場です。
で、またジョンの親父(義父?)がまたええ味出しとるんですなあ。航空
チケットやパスポートを発見して、国外へ逃げることを悟ったのに黙って
送り出す。そして、脱獄当日には関係者として警察の捜査を受けるのを
遅らせるためにワザと遠出したり。などなど、エエ仕事してはりましたわ。

このおとーさんもある意味幇助犯やな。
その他、捜査官サイドの皆さんもイイ感じでしたし、途中ジョン親子と親交
を有するシングルマザー(ニコール)も好印象でしたわ。個人的にはルーク
役の子供が、後半寝てばっかりでちょっちナニかな~と思ったけど、これは
本人がどうこうより、そういう脚本だったんでしょな。なので、彼の使い方
がナニ、でありますね。

左:妖艶ニコール、右:寝る子は育つのルーク君
ラストは一応のケリが着いた風なんですが、この先どうなるのか若干含み
を持たせたエンディングといったところでしょうか。またモヤモヤした感じも
しないではないが、余韻ということにしときましょう。
2時間超と結構長い映画ですが、シーン毎の切り替えが適切ってのもあって
テンポもキレもいい印象、かつ、ダレ場も殆どなしでスリリングさを全編保ち
つつ進行していくので、グイっと引き込まれますね。同じ長尺でも単に冗長
な私の文章とはエライ違い…ってのは置いといて、本作は良かったです。