言わずと知れた昨年の話題作でして、オスカーも獲ったんでしたかね。
私なんぞのB級道楽者は、こうした有名な作品、アカデミー賞の対象と
なるような映画ってのは、得てして肌が合わんというかちょっと志向が
違うかなあ、とあんまり馴染みがなかったんですが何となく観てみたら
そりゃもおアンタ、すごいのすごくないのって、いやすごいんですが。
いやーホンマもうスゴイとしか言いようがなかったですわ。で、冒頭の
悔やみとなった次第でございます。
解説
「突発的事故により無重力空間に投げ出された宇宙飛行士たちの極限
状況を描いたスペースサスペンス。ライアン博士と宇宙飛行士・マットは、
スペースシャトルでミッションを遂行していたが…。サンドラ・ブロックと
ジョージ・クルーニーが共演」
あらすじ
「地表から600キロメートルも離れた宇宙で、ミッションを遂行していた
メディカルエンジニアのライアン・ストーン博士(サンドラ・ブロック)と
ベテラン宇宙飛行士マット・コワルスキー(ジョージ・クルーニー)。
すると、スペースシャトルが大破するという想定外の事故が発生し、二人
は一本のロープでつながれたまま漆黒の無重力空間へと放り出される。
地球に戻る交通手段であったスペースシャトルを失い、残された酸素も
2時間分しかない絶望的な状況で、彼らは懸命に生還する方法を探って
いく」
(シネマトゥデイ)
あらすじ言うところの、スペースシャトル大破という想定外の事故の件、
勝手に大破したんではなく、某国が廃棄目的で自国の衛星を爆破したら、
その破片が地球の軌道上を彗星のように猛スピードで回り始め、スペース
シャトルに追突してきた、というのが原因。

雨粒の如くの多数の衛星の破片が、時速何千キロという速度で襲ってくる。
避けようがありません。コワイわー。
これで、シャトルは一気に大破。ライアンも吹き飛ばされたがマットが
救助。が、彼ら以外のクルーはお亡くなりに。

顔面を破片が貫通しちゃってます。宇宙って気温が極めて低い(-270℃
ぐらいらしい)からか、事故直後だがグチャッとならずに乾燥して見える。
ここぐらいですかね、本作でエグイ絵というのは。
2人は近くにあった衛星目指して移動開始。衛星のポッド(?)を切り離し、
それで地球に帰還しようというプランです。で、えっちらおっちらと宇宙服
のガス噴射装置で進んでいく。

ライアンの酸素タンクが殆どカラに…というところで何とか辿り着くが、ここ
でまた衛星残骸流星群が襲ってきて直撃。

もう踏んだり蹴ったり、泣きっ面に蜂、地獄で閻魔、ですよ。そして反動で
遠くへ飛ばされそうになる二人、辛うじてワイヤーで留まっているが、この
ままでは切れてしまって二人とも死んでしまうという判断で、マットは自ら
ワイヤーを切断、流されていってしまいます。

とうとう独り取り残されたライアン、何とか衛星内部に潜り込み、マニュアル
を見ながらポッドを切り離しに成功するが…。 するが、何やねん?という
ことなんですけど、あんまり書いていくとネタバレというか興ざめになり
かねませんので、この辺でやめときますわ。
まあ、敢えてキーワードを残せば、消化器、中国語、マット再登場、ってな
感じですかね。観賞済みの方にはあー…とお分かりいただけましょう。これ
からの方はモヤモヤしてください…。
さて、本作、やはり映像は圧倒的でしたねえ。私がよく観るB級的なモノ
とは異なり、やたらレーザー砲が飛び交うこともなく、深遠にして静謐。
反動で流されてしまうとこや、エアで移動するとこなんか、一気に絶望的
になりますね。苛酷という点では深海に似た環境なんでしょうか。

もちろん、私なんざどちらも知らんわけですが、それでも非常に納得感の
ある絵作りでした。
反面、シャトル大破や破片流星群が迫ってくるとこなんかは、対極的に
派手です。絵的には澄んだ夜空に広がる花火のような感じでして、状況
は大変なのだが美しささえ感じてしまいましたわ。

ちょっと写真では伝えきれませんなあ。
当然のことながら、本作も実際に宇宙行って撮ったんではなくセットで
やってるんでしょうけど、めっちゃハイレベルの作り込みですね。宇宙
飛行士の人が見たらどう思うか分かりませんが、素人の私からすれば
全く破綻がないように見えました。スゴイです。監督のイメージもさる
ことながら、それを見事に具現化した撮影、美術、大道具、小道具等々
のスタッフの皆さんの力量を感じましたわー。船内の出来栄えとか、
無重力下での浮遊の動きとかも、実に得心いくものでしたし。

吊られて撮影してるんですかね…。
さてキャスト、ライアン役のサンドラ・ブロックとマット役のジョージ・クルーニー
の2名だけです。正確には死体役とか、冒頭幾名か作業してる人が出て
きますが、ハッキリと顔映ってるのは主役2名だけ。音声出演は何人か
いますが。エド・ハリスの名前もあったな。

クルーニーの表面的にはちょっと軽い感じで実は冷静沈着ってなキャラ
も良かったが、やはり本作ではサンドラさんが輝いてましたなあ。プロの
飛行士ではない科学者としてパニくってみたり、逆に的確な状況判断
と行動でピンチを切り抜けたり。もうダメだと諦めたり、不屈の闘志で
よみがえったり。

大半が独り芝居となるこの映画で、実に頑張っておられたと思います。
で、また彼女というキャスティングもグッドですわな。これがアンジー
だったらちょっと濃いし、ミラ・ジョヴォヴィッチあたりを持ってきたら
アンデッド出てきそうやし…。サンドラ・ブロックの普通さ+αが本作
に極めてマッチしておったやに愚考されました。ラストシーンもホント
に実感こもった印象でよかったです。
てなことで、宇宙空間の映像が話題になりがちな本作ですが、まず映画と
しての出来が素晴らしいです。余計なドラマや回想シーンなども持ち込む
ことなく比較的短尺にまとめ上げた潔さも相俟って、非常に濃密な作品に
なっていると思われました。
いつも大抵、アレがどーだのココがいかんだのとケチつける私ですが、
今回は何もありません。参りました。